様々な視点からの開業医の現状と、有心会で養える開業力について見て行きます。
まずは全国的な医師数について見ていきましょう。
平成18年以降、厚生労働省の取組みにより、大学における歯科医師の定員削減や、国家試験合格点の引き上げ、平成26年からはさらに、合格基準を厳しく見直すなど、歯科医師の需給問題が明確となっています。
しかし直近10年間では歯科医師数は毎年平均約700人増加していっており、この傾向のまま行くと2030年には歯科医師数は11万人を超える見込みとなります。
総務省によると、2016年現在での日本人の人口は1.27億人ですが、2030年には1.16億人、2048年には0.99億人と、近い将来日本の人口は1億人を割ると予想されております。
指標とされる人口10万人に対する歯科医師数は、2016年現在で82.4人であるのに対し、2030年には100人程度になると見込まれます。
開業医の場合、患者数の減少が自分の利益に直接反映される可能性が高く、平均年収を維持することはさらに困難になると思われます。
全国的な開業医と勤務医の割合を見ると、そこに一定の傾向が見えてきます。
2016年現在では、診療所で働く医師のうち、開業者と勤務者の割合は、【 約67%:約33% 】となっています。
10年前が【 約72%:約28% 】であったことから、この傾向が継続した場合、2030年には勤務医の割合は約40%程度を占めていると考えられます。
開業医 | 勤務医 | |
2006年 | 58956人(71.6%) | 23368人(28.4%) |
2016年 | 59482人(66.7%) | 29684人(33.3%) |
また医院数を見ると、個人開設数については、10年前はが2000件近かったものの、2016年現在では約1300件程度となっています。
法人の開設はあまり増減なく300件前後となっており、法人診療所の割合が16%から25%近くまで増加しているのも事実です。
以上のことから、長期的なトレンドとしては、法人での勤務医を希望する歯科医師が増加傾向にあると言えるのではないでしょうか。
当会での多数の開業実績や一般的なケースを元に開業に必要な金額試算は以下のようになります。
仮に開業資金として500万円を準備できたとしても、5000万円は金融機関からの借金をする必要があります。
35才で開業を決意したとして、55才までの20年での返済計画を組んだ場合、
仮に金利2.5%の20年ローンとすると利息だけで1300万円、合計6300万円。月々の返済は、約26万円です。
マイホームや自家用車など家族構成に応じて生活に必要な費用も掛かってきます。
マイホームと車で仮に20万円必要とすると、合計で月々46万円にもなります。
さらに生活費も必要となれば、手元にいくら残せるでしょうか。医院運営が軌道に乗るまで耐えられるでしょうか。
歯科医としてのスキルだけでなく、ビジネスのセンスも問われる課題が多く存在します。
ここまでは日本全国の平均的な数値を例にしてきました。ここからは実際の都市を例に見ていきます。
医院運営に大きく関わる1院あたりの人口をベースに3つのカテゴリに分類、その都道府県における1院あたりの人口が、全国平均を下回るカテゴリを「都市型」、上回るカテゴリを「地方型」、平均的なカテゴリを「平均型」とします。
そして、カテゴリのサンプルとして、それぞれの傾向が顕著な都道府県を3つずつ挙げ、それぞれの特徴から歯科医院の現状を見ていきます。
医院数は過剰、東京や大阪などのような他府県からの流入が見込める都市は比較的年収は高い、大都市でも近隣が地方都市の場合流入が見込めない、という傾向から、医院数が過剰な大都市での売上には、他府県からの流入獲得が重要で、そのためには広域での競合との差別化、広告力、それを継続する体力(資金)が不可欠と言えます。
医院数は過小傾向、人口(患者となる母数)は都市型、平均型に比べて優位性がある、平均年収は比較的低い、傾向にあります。平均年収の低さから、近隣の大都市への流出が多いと考えられます。地域の受け皿として大都市医院の高い広告力に勝てる魅力あるブランディングが必要となります。
医院数は平均的、平均年収は地方都市より少し高めの傾向にあります。このカテゴリは、都市型の医院ほど体力はないが、地方では物足りなさを感じる中堅医院の進出が多いと思われます。医院数は平均的ではあるが、その水準自体が高くなってきています(※20年前は1院あたり2100人程度)。大都市型の広告展開と医院周辺地域へのブランディングの両面でバランス良く訴求することが不可欠です。
開業医に絞った場合、上記の平均年収より高くなると思われますが、月に60万円以上の出費が必要となる開業を成功させるためには、既存患者の少ない初期の数年を耐える資金繰り、そしてその後も継続して高い広告力をキープできるオンリーワンの診療展開、そして何よりビジネスセンスが重要と言えます。
東京では年間300件、約3%が廃業、新規開業で見ると約3割が3年以内に廃業していると言われています。
歯科医の年収分布では、40代後半以降でないと開業できる程の返済力がないのも現状です。
開業医の平均年収は1200万円といわれていますが、事業所得として申告した歯科医約5万人のうち、1200万円以上の年収があった歯科医は28%程度で、72%は平均年収を下回っていたというデータがあります(※高額所得ランキングソフト「高額所得ランキング2013」(発売元(株)タックスデータバンク)より引用した2011年時の参考数値)。
年収的に余裕のある開業医を夢見たとしても、実際には40代後半という年齢から、11万人いる歯科医の中で上位30%に食い込めた者のみとなります。
ここまで歯科業界を取り巻く状況について見てきました。
体力のある法人は巨大な市場を求め都市部へ集中し周辺都市も商圏に。
空洞化した地方であっても目の肥えた患者は良い医院を求めて他府県へ。
患者数ゼロからの開業を成功させるために乗り越えるべき課題が様々あったと思います。
患者様に責任ある歯科治療を提供するために、あなた単体、競合がひしめく市場に対して、どうアプローチしていきたいですか。
市場があなたを差別化して評価してくれるために何が必要なのでしょうか。
悩みを抱える患者にとって歯科医としてのあなたの本来の価値は尊いものであるはずです。
経営者になり患者獲得に奔走するか、1人のドクターとして治療に汗を流すか。
あなたの歯科医師としてのQOL(クオリティオブライフ)にとって非常に重要な選択となります。